Keigo

殺人に関する短いフィルムのKeigoのレビュー・感想・評価

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
4.5
キェシロフスキ作品はこれが4作品目かな。
これまで観た中では一番グッときたかも?一番ショッキングだからかもしれないけど。『愛に関する短いフィルム』同様一筋縄ではいかない、人が人を殺めることについての物語。

『デカローグ』の中でキェシロフスキが真っ先に映画化を望んだのがこの第5話だったそうだが、出資の許可が下りたのは『愛に関する短いフィルム』の方だったらしい。ところがその後のポーランドで死刑の是非をめぐって論争が起こり、その偶然が作用して結局本作も映画化にこぎつけたと。

緑や黄色みがかった暗く陰鬱な映像からは閉塞感や空虚さ、残酷な孤独の臭いが漂ってくる。青年ヤツェックの妹が酔ったヤツェックの友人が運転するトラクターに轢かれて亡くなったのは事故、ヤツェックが半ば衝動的にタクシーの運転手を殺害したのは殺人、法によって裁かれたヤツェックの命を奪ったのは死刑。そこには本質的に、どのような違いがあるのか。死刑という一人の人間を死に至らしめる刑罰は果たして正しいと言えるのか。それは現代においても変わらない、人類の普遍的な問いであると思う。

青年ヤツェックがタクシー運転手の殺害を決行したその日、新米弁護士ピョートルは同じカフェでヤツェックの近くにいた。社会が法によって彼を殺す前に、彼を救うことは出来なかったのか。ヤツェックを救えなかったピョートルは苦悶する。運命と選択の狭間で。


...まだ観てないけど『デカローグ』ってポーランドのテレビドラマなんだもんな。こんな作品をテレビで観ているポーランドの大衆ってどんな人達なんだろう。日本でこんなクオリティの作品が作られてテレビ放送されたとして、一体どれぐらいの人が観るんだろうか...


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