ハル

死体の人のハルのネタバレレビュー・内容・結末

死体の人(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

舞台挨拶付き完成披露試写会にて。
斬新な設定、物語の本筋は面白かった。
正直、色々足りないと思うところはあったがそれは後述。

まずは本作の『死体の人』というタイトルについて…意味深で興味をそそるよね?
これは死体の役ばかりくる主人公を指した言葉なんだけど、その“死体の人”を演じる奥野瑛太が抜群に上手い!
実は前から注目していた役者さん。
“グッバイ・クルエル・ワールド”で完全にイッちゃってる役を演じていて、もう芝居に見えないくらいのハマり方だった衝撃。
強く脳裏に焼き付いている。

今回は元々役者をやっていた監督自身を投影した物語となっていて、冴えないながらもひたむきに頑張る青年。
しかし、彼に舞い込む仕事は主に死体役。
首吊り、飛び降り、溺死、刺殺…
その為、死について必死に考え、自分なりに役で表現したりもするんだけど「オーバーなのはいらない、おとなくしく死んでいて!」と言われてしまう悲しさ。
シュールにもほどがあるし、根本的に生きるのが上手じゃないヒロシ。
でも彼は真面目で本当にいいヤツなんだよ。
そんな彼が一人の風俗嬢と出逢うことで、ちょっとだけ前に進んでいくお話。
年齢も重ね、結婚や家族とのエピソードも絡み合う最中、人生や今後に思いを馳せていく。

一方でヒロインの風俗嬢、カナを演じたのは唐田えりか。
ヒロシがデリヘルを頼んだことで知り合うエッチな縁。
彼氏に貢いでしまうリアルにいそうなタイプ、でも根っこの部分は素直で優しい女性。
なんで、多くの人は妄信的に変な男にハマってしまうのだろう…
自業自得といえばそれまでだけど、男が生粋のクズ男で何だか可愛そうだった。
妊娠し、ヒロシと関わることでカナもまた少しずつ自分と子供の人生についても考えていく。
唐田えりかの作品は“例のやつ”しか見たことないけど、今回はかなり頑張っていたんじゃないかな?
過激までいかないとはいえ、役に向き合っている感じはヒシヒシと伝わってきた。

そしてその彼氏が…典型的なthe・クズ男の登場。
酷すぎてクズ男で検索かけたらこいつが出てくるはず(これ前にも似たようなタイプいたな)
無職、音楽をやってるふりをしては彼女から金をせしめて日々麻雀。
妊娠したら「堕ろせ!プータローと風俗嬢の子供なんて可愛そうだろ、ろくな人生にならないぞ」
発想がもう腐りきってるゴミ。
挙げ句に妊娠した彼女を蹴る。
こんな最低最悪男をリアルで見たことないんだけど、やっぱりどこかにはいるのかな…

そんな三人が絡み合うこの物語はヒロシとカナの成長譚なんだと思う。
人生がうまく行かない二人が出逢うことで、ちょっとこれまでと違う方向に舵を切る瞬間を切り取ったもの。
インパクトのあるタイトルとは裏腹に、売れない役者の辛さや将来への不安、日々の憂鬱をユーモラスに描いた作品。
生きていくのって大変だ。
でもさ、一人だけでも理解してくれる人、応援してくれる人がいればそんなに捨てたもんじゃないかもよ、と思えるような不思議なお話だった。
妊娠検査薬から繋がっていく伏線回収の流れがトリッキーでほっこりしんみり。

で、冒頭に述べた部分。
役者達は良かったし話自体も面白かった、なのににどこか物足りないのは監督の力不足に感じられた。
演出や脚本をもう少し練っていたら遥かに良くなる可能性があるだけに、そこが惜しい。
監督自身、自主制作作品が多いということだったので、商業作品としてのキャリア不足が浮き彫りになった形。
あと一工夫あれば!がいくつも内在する、原石のかけらのような映画。
今後に期待!

最後、舞台挨拶について。
奥野瑛太さん、これまでの役柄は尖ったものが多いけど、とても好感の持てる青年だった。
役に対し、映画に対して誠心誠意思いの丈を語っていたのが印象的。
監督に対するリスペクトも強く感じられ、人に対して敬う気持ちを表せる役者さん。
こうした姿勢は魅力的に映るし、人間力の高さも兼ね備えている。
さらに注目度増し。

続いて相手役の唐田えりかさん、初めて生で見たけどメチャクチャ綺麗で可愛かった。
透明感半端じゃない。
ビジュアルだけなら今の一線クラスの女優と比べても全く遜色ないように思えたし、びっくり。
あ〜この人に好意向けられたらそりゃそうなるわ、って感じ。
イメージ商売だから仕方ないけど、ここからどう歩みを進めていくのかが楽しみ。
元が良いから本人の努力と作品次第では返り咲きもあり得る…はず。
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