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アイスクリームフィーバーのNGのネタバレレビュー・内容・結末

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます


『チワワちゃん』『ホットギミック』以来の衝撃。だいすき。

まず、出てくるオンナ、出てくるオンナ全員かわいい。
佐保にも菜摘にも優にも美和ちゃんにもなりたい。
そんな我々の理想を打ち砕き、誰かに憧れてしまった時点で彼女たちとおなじ地平には立てないという事実を突きつけるようなモトーラ世理奈ちゃんの圧倒的"個性"と"存在感"。彼女の存在をはじめて認識した『ブラック校則』のサントラに〈君は鮮烈〉という曲があるけど、モトーラ世理奈ちゃんの存在感はほんとうに"鮮烈"という言葉がぴったり。ピンクのフィルターがかかったようなやわらかい世界にあらわれる真っ黒な彼女はまさしく"鮮烈"。

センスがよくて、他人の目なんてまるで気にしていないような誰がみてもわかるくらい独自のスタイルを貫いているひとってほんとうに魅力的だ。何色にも染まらないかっこいい同性に対する強烈な憧れ、恋なのか恋じゃないのかもわからないくらいの強い感情、お近づきになりたいみたいなきもちって大人になってからはあまり抱かないものだから、菜摘がちょっと羨ましいし、なにもかも諦め、毎日に満ち足りなさを感じながらやりすごしていた彼女が佐保に出会い、佐保の言動行動、じぶんの感情に困惑しながら、右へ左へ忙しく揺れ動いている様子がとってもラブリー。

吉岡里帆ちゃんってこの世のすべてを手に入れてもおかしくないようなキュートなルックスとスタイルに恵まれているのにどうしてあんな"抑圧"の象徴みたいな、どこか窮屈そうな、満ち足りていないような役が似合うんだろう。

最後の《百万年君を愛す》であの夏が、あの出会いが菜摘だけではなく、佐保にとっても特別であったことが示されるのもお洒落ですきだった。言葉ではなく映像や映画の力を、観客の想像力を信じている作品ってそれだけでもうだいすき。


あとはやっぱり安達祐実と松本まりかの姉妹キャスティングが天才だった。安達祐実が泥棒猫で松本まりかが負け犬なのもすごいわかる…!

美和ちゃんが安達祐実の娘で松本まりかの姪という設定に負けない美少女なのもすごいし、ありえないくらいの美少女でありながら、妙に冷静で大人っぽいのも"妹の男をとるような女の娘""母子家庭"という設定にリアリティがあってよかった。そんな大人っぽい美和ちゃんがベランダのお花のようなシミに葉っぱを足したり、無邪気に卓球をたのしんでいる姿をみると年相応のかわいさに安心するし、癒やされる。

優が美和に"おばさん"と呼ばれると「優ちゃん、ね?」と訂正したり、大人気なく冷たい態度を取ったり、喧嘩したりするのはじぶんでも心の奥底にしまっていた未消化な部分に触れられて神経質になっているというのとはまた別に、もう喧嘩することもできなくなってしまった姉の面影を重ねている部分もあるのかな。最初はじぶんの心にキズを残した男の面影を感じて一緒にいるのがつらいのかな?とも思ったけど、どちらかというとおねぇちゃんの影を感じ取っているような気がするし、優がずっと心に抱えていたのは元カレとの"忘れられない恋"ではなく、ひとの男をとった姉への怒りと、怒りに任せて彼女の死に目に立ち会えなかった(仲直りできなかった)後悔だったのかな。

忘れられない恋と火傷、愛と核兵器、街とのすれ違いなんかの喩えもすきでした。2023年暫定1位。
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