【最後の砦】Le petit Nicolas
原作はフランスで50年以上愛され続け、世界30カ国で翻訳されている児童書だそうな。その「プチ・ニコラ」の初のアニメ化(実写映画が既に作られてるが)。
絵の良し悪し、好き嫌いはあろうかと思うが、軽妙なイラストが実に愛らしい。それを昨今、見飽きたフルCGではなく、水彩画のようなタッチで、原作の雰囲気を大切に映像化されているところが好感。
そもそも原作を知らないので、アニメ化されたことによる良し悪し、イメージの差異による嫌悪感などもなく、素直に鑑賞できた。
お話としては、児童書の内容そのものをアニメ化したのではなく、原作者の2人、イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと小説家ルネ・ゴシニの半生を描き、折々、二コラのエピソードが挿し挟まれるのみならず、彼らの面前で、実体化した少年二コラが飛び回り、時に作品のヒントを与え、制作を励まし、慰めを与えたりする。ファンタジーな、ちょっとしたフィクション部分が愛らしくてよい。
使われた音楽も、1950-60年代のパリを彷彿させるものだろう。Jazzyな、ナイトクラブっぽいオシャレなBGMが優しくストーリーを包みこむ。ほっこりしながら、短い作品(99分)を楽しめた。
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(ネタバレほとんどなし)
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作品について語ることは少ないので・・・
我が家の“最後の砦”、下高井戸シネマで鑑賞。先日の木下支配人トークショー後、初の訪問。
あいにく、支配人さんはご不在?あるいは映写室に籠っていたか、お姿は見えなかった。ご挨拶できればと思ったけど残念。
とはいえ、トークショーで聞いた、あれこれの作品上映の苦労話を思い出しながら楽しく待ち時間を過ごせた。
上映前に流す予告編も作品ごとに変えている。この作品を観るなら、次に興味持つのはこれかな?とあれこれ考えてのこと。また、来場者が多く入場に時間がかかれば推した時間に合わせて予告編の数を間引いたりもするとか。
なにより、面白いのは音量調整かな。客の入りに応じて、音を人が吸い込む影響を考慮してボリュームを調整するのだそうな。
この日も、予想以上に入っていた印象。冬、厚着になるとさらに音が吸収されるので、服装に応じても調整するというアナログ感!
CMと予告編と本編でスクリーンのサイズも違うので、バリマスクという左右のカーテンの幅も調整する。シネスコープだビスタだ、スタンダードだと、新旧の作品を幅広くかける下高井戸シネマはその調整も都度都度で大変だろう。
一番興味深かったのは、エンドロールも終わったあとの「黒味」という部分の調整を映画館独自でやっているというお話。
近頃、エンドロールもあれこれ工夫がされてたりされてなかったり。最後にオマケ映像、続編のティザーが流れたりもする作品もあるが、通常、本編の余韻に浸る至福の時間。
Dolby社のマークや制作会社等のロゴが流れ去り、いよいよ終了だが、その後の「黒味」をどれだけ残すかは考えてやってると。作品によってはプツンと切れるものもあるそうな。それじゃあなんだなと、「黒味」の長短を調整し、客電のタイミングを計っているというのは面白い。
村上春樹は、ロケ弁のケータリング会社がどうだこうだと見せられる意味が分からん!と、エンドロールはとっとと席を立つと何かのエッセイで読んだ。
とはいえ、映画館によっては、こんな形で最後の最後まで作品に愛情を注いでいるんですよ、と伝えたいものだ。
そんなあれこれ、本編の前後も含め楽しめた今回の鑑賞でした。
「プチ・ニコラ」の日本版をやるとしたら、「サザエさん」? いや、児童書なら『窓際のトットちゃん』だな、と思っていたら、この冬、初の映像化らしい。実写じゃなく、アニメで(そのほうが良いね)。
絵のタッチが、原作挿絵の、いわさきちひろの絵ではなさそうなのが、ちょっと残念。いわさきちひろの作風でのアニメ化はそうとう難しいか? でも、日本の誇るアニメ技術を持ってすれば出来ないことではないのでは?
まぁ、それは原作を知るが故の高望みか。静かに、期待してましょう。