終盤のスカルスガルドの情けなさたるや。
ミアゴスが相変わらず素敵。
見事に常軌を逸したふた回りも年下の女に弄ばれてえらい目に遭う夏のバカンス。
日常に帰るためのバカンス。
日常に帰れなくなるのは最早バカンスと呼べず小休止でもない。刺激の虜になり壊れた後は誰もいない浜辺に打ち捨てられた汚いカニになる。
観光地でやりたいことって大概半分くらいしか出来ないし満足もそこそこになっちゃうけれど、腹八分目くらいがちょうどいいのかもしれない。
ツーリズムが内包するところの逃避願望を見事に見透かして理想の依り所を演じ、日常を逸脱して小市民がいきがったところをすかさずぶちのめすというたいへん趣味のいい映画。とんでもない女。とんでもない特権階級たち。
観光映画とファムファタールものって大層相性がいい。
この国では観光客は犯罪を犯しても大金を払えばクローンに罪をなすりつけて逃れられる。この一点のSF要素を架け橋にして、旅先の実像を理解しようとせずに表層だけを散らかして帰るというツーリズムのもつ悪しき側面が、魔性の女に自分の理想の姿を映して吸い寄せらた結果日常が崩壊を迎えるファムファタールストーリーとシームレスにつながっていく。
ちょっと終盤の盛り上がりは期待したほどではなかったが、ホステルが大好きな自分としては久々にこういうのがみれて大満足。
興味の矛先が現地民ではなく、内輪でいじめて楽しんでる感じが結局彼らは終始外(旅先そのもの)に目を向けれてないことの証左でもあると言えなくもない。
また憎たらしいのはあの富豪連中は所詮は旅よと心得てて『おつかれっした』みたいなテンションで日常の自分に帰れちゃうところなんだよな。ほんとひどい…笑
でも全体的にすごいよくわかる。浮かれた瞬間突き放されるあの底が抜けるような情けなさ。自分の胸に聞いてみたらこの情景はどこかでみた景色だった。