このレビューはネタバレを含みます
息子の世話に疲弊するシングルマザーが逃避として参加した資産家の友人とのヨットクルーズは、突然の悪天候によって悪夢への道行きとなる。
ヨットが故障し遭難した彼らはおいでと囁くように都合よく現れる巨大な幽霊船に乗り込み、時間の牢獄に閉じ込められるのだった。
タイムループSFスリラー。
全体的にタイムループ描写のアイデアが豊富で、設定自体も意外と奇抜でとても面白かった。知らない映画を何の気なしに見たけど面白かった時のこのうれしさよ。
終盤の展開が予想外でいい。
腑に落ちない点もいくつかあるけど、面白かったしお話がきれいに終わっててあまり気にならない。いい映画でした。
タイムループものとして欠かせない
『何度もループしてやがる!』て
驚愕するシーン描写が結構衝撃。
この話のユニークなのは主人公らのループを引き起こす『船』自体は特異点として出来事をすべて蓄積していってるところかと思う。
世界全体がループするんじゃなく人間だけがループするって意外と珍しいのでは?
同じ船内をぐるぐる移動するので
必死に事態を好転させようともがいた先で
同じ行為の蓄積としての死体の山だったり、
落としたブレスレットの山が存在してたりするのにハッとさせられる。同じ世界線の運命から逃れられてない絶望感。
別ルートを行ったつもりが、何度も既にそれも過去の自分が試してたんだ…ということが視覚化されててすごく面白い。自分で過去の自分と殺し合う羽目になるこの不条理劇だが結末まで見ると一定の納得感がある。異常事態の状況の中、立場の違いで分裂した自分たち。息子が待つ家に帰りたいとねがうドラマチックな母親の姿を追った先に、その円環が描くのは1人の女性のままならない現実のありさま。