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刑事ジョン・ルーサー: フォール ン・サンのナーオーのレビュー・感想・評価

5.0
BBCのドラマシリーズ
『刑事ジョン・ルーサー』の続編。

シーズン5まで作られたドラマのその後から始まる物語ではありますが、『エルカミーノ ブレイキング・バッド』や『ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち』などドラマを全話観た前提の作りではなく、一応これ単体でも成立する作品なのでシリーズを観たことがないという人でも問題なく今回の映画版から観れると思います。とはいえ、シリーズファンへの目配せともいえるサービスも豊富なので、観ていた人ならもっと楽しめる作りになっています。

シーズン1〜5まで全部観た上での評価としてはドラマ版の良さは全部残しつつ、映画ならではのスケールの大きい見せ場が用意された見事な映画版、『刑事ジョン・ルーサー』の映画化としてはこれ以上ない出来だったと思います。

この『刑事ジョン・ルーサー』というシリーズは毎回、『セブン』のジョン・ドゥ並みのサイコな知能犯が登場しますが、今回の映画版も例外ではなく、『猿の惑星』三部作や『ザ・バットマン』などのアンディ・サーキスが不気味なサイバーサイコパスを怪演しており、ドラマなどに登場する数多くの殺人鬼に劣らない存在感でした。

この殺人鬼にハメられて刑務所に収監されることになったルーサー。刑務所では警官嫌いの犯罪者に襲われる始末。そして刑務所を脱獄する場面はステファノ・ソッリマ監督の『ウィズアウト・リモース』の独房戦を連想する戦闘が続き、とても楽しかったです。

刑務所を脱獄した後はルーサーのトレードマークとも言える、お馴染みの黒いコートと赤いネクタイを身につけて殺人鬼を追跡しますが、逃亡の身ながら溢れ出るカリスマ性を発揮して本来敵とも言える警察さえも魅力するルーサーはやっぱりカッコいい。

映画版ならでのスケールの大きい展開や見せ場も良かったですが、なによりもドラマ版に負けないくらいエグい展開の連続で、ドラマ版の重厚さやダークで容赦のなさという特徴が維持されていたのがとても良かったポイント。

ただシリーズファンとしては、あの件はどうなったの?という点もあるにはあります…

例えばシーズン5のラスト。ルーサーはあの状況をどうやって乗り越えたのか?や一番知りたかったアリス・モーガンの件については一切明かされることがなく終わってしまったのは残念でした。

でもこの映画版でルーサーシリーズが終わるとは思えないので、今後に期待したいです。

細かい不満点もあるにはありますが、エンドクレジットで流れる曲を聴いた瞬間にそんな不満は吹っ飛びました。シリーズファンとしては最高の映画でした。
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