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極限境界線 救出までの18日間のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 アフガニスタンの砂漠で、タリバンによる韓国人23名の拉致事件が発生。タリバンは、韓国軍の撤退と、刑務所に収監されたタリバン戦士23名の釈放を要求。与えられた猶予は24時間で、そこに韓国政府が差し向けた外交官のチョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)と、情報院が差し向けた工作員パク・デシク(ヒョンビン)が秘密裏にアフガンのフィクサーと交渉を開始する。チョンは正攻法で人質奪還計画に挑み、パクはどんなに汚い手を使ってでも人質の命を救おうとする。要は韓国映画にありがちな清濁併せ盛つ2大スターの苦悩からの固い絆を見せる映画なのだが、何と言ってもファン・ジョンミンの芝居が安定している。『コンフィデンシャル:国際共助捜査』から間髪入れずに登場したヒョンビンの髭面もなかなか良いのだが、ヒョンビンは立て続けに同じような役ばかりやらされている印象も否めない。全編苦み走った男たちの苦悩が感じられる力作で、女性キャストは人質のみなのだが、今作は女性監督イム・スルレによるものだと聞いて再度驚いた。イム・スルレとファン・ジョンミンと言えば、名作『ワイキキ・ブラザース』から20年強ぶりの感動の再会でもある。

 登場人物たちは脚色もあるようだが、実際に起きた事件である。どことなくハマスがイスラエルに人質をちらつかせる現在の世界線もオーバー・ラップする。2か月に及ぶ大規模なヨルダン・ロケを敢行しリアリティも十分で、アフガニスタンとヨルダンでは厳密に言えば違うのだろうが、やはり荒涼とした砂漠地帯やゴツゴツした岩場の雰囲気などはアジアでは出せない。イスラム教の地が持つ崇高さと厳格さをしっかりと捉え乍ら、当時のタリバンとののっぴきならないやりとりを交える展開も悪くないのだが、リュ・スンワンの『モガディシュ 脱出までの14日間』には遠く及ばない印象だ。然しながらファン・ジョンミンとヒョンビンの接着剤として頑固な2人を結び付ける存在のカシム(カン・ギヨン)が出色の出来で、カン・ギヨンは実際にアフガニスタンの現地人が話すパシュトー語を完璧にマスターし、今作に臨んだという。緊迫した交渉のやりとりの一方で、コミカルなカシムのやり過ぎない演技が光る。一方でタリバンや人質たちの書き込みは足りない印象だが、ベテラン監督であるイム・スルレは韓国国家の本音と建前を余すことなく我々観客にまざまざと見せつけている。
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