Jun潤

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのJun潤のレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.8
2023.05.26

荒木飛呂彦原作×小林靖子脚本×高橋一生主演。
ある意味伝説となった山崎賢人主演『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』から早5年。
一方、2020年から恒例になったNHK年末の実写ドラマ化シリーズ『岸辺露伴は動かない』が3年目にしてついに劇場へ。
高橋一生の演技力や、『ジョジョ』アニメシリーズを手がけている小林靖子女史の素晴らしき脚本と、狂言回しとしての岸辺露伴や姿の無い「ヘブンズ・ドアー」だけでなく、露伴が遭遇する多くの奇妙な出来事との親和性の高さ、素晴らしい。
個人的には、『ジョジョ』本編はもちろん、『岸辺露伴〜』のアニメシリーズ&ドラマシリーズ共に視聴済です。
原作はルーヴル美術館主催のプロジェクトに対して荒木飛呂彦が実際に美術館を取材し、2010年にウルトラジャンプにフルカラー読み切りとして掲載された同名作品。

「ピンクダークの少年」を連載中の人気漫画家・岸辺露伴は、常に自分の漫画制作のためのリアリティのある体験やモノを求めていた。
露伴が次に興味を示したのは美術品と色。
オークションに出品される一枚の絵に興味を示した露伴は、ライバルと入札を繰り返し、150万円で黒一色の絵を落札する。
しかし落札した当日に絵はライバル側の人間に奪われてしまうも、絵を持ち去った男に奇妙な現象が起こり、絵は露伴の手元に戻る。
男が破いた絵の裏側に作者のメッセージを見つけ、「ルーヴル」「黒」「後悔」という言葉に興味を示した露伴は、パリのルーヴル美術館へ、編集者の泉京香を伴って取材に行く。
ルーヴル美術館にあるという「この世で最も黒く、最も邪悪な絵」を巡り、露伴の過去、パリ、そして250年前の日本を繋ぐ奇妙な縁が、露伴によって読み解かれていく。

なるほどなぁ〜。
タイトルに「ジョジョ」とも「奇妙」とも付いていないのに、れっきとしたジョジョコンテンツの中の一つとして奇妙な存在感を発揮していました。
一連の出来事の真相に関しても、スタンドというよりも石仮面や聖なる弓矢のように、人為的に発生したものではなくなぜかそこにある怪異と、それに飲み込まれない「黄金の精神」や逆に飲み込まれ悪用する「ドス黒い邪悪」など、ジョジョの各部をギュッと凝縮したような感じ。
それに加えてあくまで岸辺露伴は巻き込まれる側、傍観者、狂言回しとしての役でしかなく、解決しない、する気もない、そもそも解決できやしない出来事に対して独自の価値観を持ちつつも人間臭い反応を見せてくれる魅力的なキャラクターに仕上がっていましたね。

上述の「ジョジョ」とタイトルに冠していなくてもジョジョであることとは逆に、ルーヴルに行くことは作品の軸でもメインでもなく、あくまで作品の一部分、一要素、ストーリーの流れ上必要に駆られて行っただけ、というポジションに落ち着いていたことも印象的でしたね。
しっかりパリらしい場面、ルーヴルっぽい雰囲気、美術品を巡る謎の数々を出しながらも、その前に露伴の過去を挿入し、ルーヴルを挟んだ上で「この世で最も黒い絵」の真相へと繋げていく構成の上手さが光っていましたね。

また、今作の絵にまつわる奇妙な縁には、実写化されたエピソードのオマージュというか、全部盛りのような感じがありましたね。
ドラマシリーズでは、個別エピソードである原作の話を、各年で中核として設定されたエピソードを中心に2〜3話制作されていました。
今作には、遺伝や親子関係だけではない、DNAを通じて人同士が時をも超えて繋がる奇妙な縁、人を狂わせてしまうほどの異様な愛情、古くからそこに存在するだけなのに近付く人間を無常に巻き込む怪異など、ドラマシリーズの方ももう一度見たくなるような魅力も今作にはありました。
Jun潤

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