じゃっく

風の谷のナウシカのじゃっくのレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
5.0
腐敗への一途をたどる世界。希望すら見えないこの世界で、ナウシカはひとり十字架を背負い、救いをもたらした。それは風の谷の民のみならず、蟲たち、敵国民に対しても。ナウシカってやっぱり神様なんだね。だってもうあんなのアガペー以外のなにものでもないもんね。
この世界には蟲を殺したくないと思う人もいるけれど、それは純粋な愛によるものではなくて、その後の報復を恐れているだけ。ナウシカだけが慈悲的な真の優しさから「共生」を願い、多くの人は「ナウシカがそう言うなら」と従う。あぁ、やっぱりナウシカは女神様なんだ。
宇多丸は「群れの固定観念をはぐれものが革命を起こし、損得を超えた利他的な行動こそが真に英雄的である」と言った(確かGotG評だったと思う)。強く、優しく、美しく、そして人としての脆さをよく知る彼女こそ真の英雄。お願いだから彼女にも救いがあってくれ。

〇〇は未来を予測していた?!的な語り口は好みじゃない。その点、『風の谷のナウシカ』はあくまでも普遍的な問題を扱っているのが物凄く良い。「時代を映す鏡」ってこの作品のためにあるんじゃないかと思うよ。環境破壊、貧困、差別。挙げ始めたらキリがない。いずれも、いつの時代にも深く根を張っている。公開当時はもちろん、今だって、10年後だって変わらない。だからこそ『風の谷のナウシカ』は腐らせちゃいけないと思う。傍観者のままじゃだめだ。ぼくらもナウシカのように、立ち向かわないと。


原作読みました。これはすごい。本当にすごい。そもそも原作がとんでもないんだけど、これを映画版に再構築したのもまた偉業。映画版の満足度が高すぎるせいで、原作に手を出す人は多くはないと思うけれど、これは絶対読むべきだよ。本当にすごかった。宮崎駿ってこんなすごい人だったんだ。宮崎駿の脳内をほんの少しだけ垣間見たあとに改めて観る映画版はまた違ったものに感じる。久しぶりに頭痛くなっちゃったよ。考えることが多すぎるせいなのか、泣いてしまったせいなのか。観れば観るほどこの作品の凄さを突きつけられます。
じゃっく

じゃっく