今作もええねー、力のある作品だ。
まず再開したばかりの銭湯の描写。タイルを一生懸命に磨き、ぶっとい薪をごとっと炉にくべ、一仕事終えた真木と井浦が壁一枚隔てて湯に浸かり一息つく。番台のおばちゃん、復帰を待ち侘びた常連の客たちの顔、顔、顔、川沿いの下町の息吹が伝わってくる。井浦と将棋を指す康すおんが侘び寂びた良い味だ。
クセの強い探偵をリリーフランキーが怪演、皆の心の中のアンダーカレントを解き明かしていく展開はミステリーとしても面白い。
真木と瑛太、そして井浦の葛藤を長回しでとらえるのだが息をするのも忘れるくらいに引き込まれる。特に真木カップルの後ろに広がる白く霞む海の絵が素晴らしい。
白く霞む中に溶ける海の青は、
薪の火でゆっくり柔らかく温められた湯の色だ。
