kaorui

悪は存在しないのkaoruiのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
悪は存在しない
素晴らしい!大好き!
冒頭の空を映しながら移動するショットは超然として神の視点のようだ。シンバルで刻むビートを不協和音がうっすら重なるストリングスが覆い尽くす。石橋瑛子の音世界が神の造りたもうた空と木々の画を補完する。
そして唐突にチェーンソーでぶった斬る!
 
父である主人公は自然世界との橋渡し役を自他ともに任じていることが都会組と村人との対話の中で見えてくる。
静かな佇まいそして深い声のトーンで暴発せんばかりの茶髪の若者を宥め、大事なのはバランスと都会組に説く。
一方で娘は自然界に魅入られ取り込まれていく。

役者の演技をはぎ取り言の葉が宿るまでリハーサルを重ね本を書き換え、その末に辿り着く会話劇は濱口作品の代名詞にもなりつつあるが、今作も存分に堪能できる。
車中繰り広げられる会話劇はキアロスタミやパナヒ作品に連なる。カット割、カメラ位置、携帯や車の発する電子音がリズムを作る。

そんな中、演出的に不連続とも言える暴発を放り込む。
霧の風景の中、木の棘は手のひらを切り裂き、手負いの鹿は止められない。
善悪の敷居をあっさり飛び越え剥き身の刀を振るう自然界の摂理を冷徹に描く。
僕は圧倒された。
予定調和には意地でもしないという監督の気迫に圧倒されたのだ。






自然の摂理を目の当たりにして、立ちすくみつつも委ねることを選択する仲介者。

猪木ゆずりのチョークスリーパーは、
素にもどって目の前で🔴🔴されたやり場のない怒りをぶつけたのかな、お前がきてから全てがおかしなったやろ!的な。
kaorui

kaorui