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コット、はじまりの夏のコマミーのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.5
【居たいと思える場所】




かけがえのない作品となった。

主人公"コット"の"走る姿"を思い出す度、いろいろ考えさせられると思うし、思い出し泣きもしてしまいそうなほどかなり印象に残った作品となった。

主人公コットが、"母親の妊娠"が済むまでの間、親戚の"キンセラ家"にて過ごすことになった一夏の出来事を描いた作品である。とてつもなくシンプルな内容なのだが、コットの"心情"やキンセラ家の"過去"と言ったものを分かりやすく、そして辛くも温かい内容になっていた作品であった。
ひたすらコットの目線で、コットが"アイリンとショーン"のキンセラ家で生きてる心地を感じるまで…そして"その先"を描いた作品なのである。

このその先…いわゆるこれは"ラストのシーン"なのだが、これがいわゆるコットが"今まで出せなかった心からの助け"のような気がして、本当に辛すぎて泣いてしまった。そう本作は決してコットのようなネグレクトを受けている子が救われるという内容の物語ではなく、ポジティブなシーンもあるが最終的には"ネガティブで終わる"物語なのである。

ポジティブな面としては、やはりキンセラ家との交流が主であろう。アイリンの心からの"歓迎と優しさ"や最初はぎこちなかったショーンとの日を追うごとに仲良くなっていく様…このキンセラ家との出会いというものはコットにとってどれだけ"支え"になったのかを、コットのみならず、コットのような経験をした事がある子供や元子供を包み込むように描いている。
ネガティブな面は、コットの実の家族との確執…特に"自分勝手で冷酷な父親"との確執が主に大きい。それとキンセラ家に起きてた"過去の悲劇"もそうであろう。ほんとコットの父親のコットへの扱いやら最低すぎて腹が立ってしまったほどである。コイツが原因で、コットのみならず、母や姉たちの負担も増えるのは間違いないので心底消えて欲しかった。
もう一つ、コットの実の家族への目線に関してだが、不思議と母や姉たちの表情は"霞んで見える"のが興味深かった。そして父親に関しては割とハッキリ映っていたのだが、傷ついてるコットにとって父親というのは"脅威"でしかなく、だからこそ大きく映るのだと確信した。

ほんと今までにないほど泣いた作品だった。前向きな描き方をしている作品ではないのだが、コットがキンセラ家と過ごしている間だけ、まるで魔法がかかったかのように幸せな時間が舞い込んでくる…これを見て、学校のみならず自分家にも居場所がない子供たちにとって"本当に必要なもの"は何なのかを思い知らされる瞬間であった。

是非、特に大人に見てほしい作品です。
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