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コット、はじまりの夏のおのネタバレレビュー・内容・結末

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

沈黙のベールに包まれた
井戸の水面は、柔らかく、冷たい。
沈黙を破った時、
その水圧に
ひきこまれてしまいそうになるけれど。

コットはセルフコントロールできない「血縁」という呪縛を、ショーンやアイリンの愛を受け入れながら理解していく。他者はどこまでいっても他者で、血縁という呪縛は残り続ける。ラストカットが示唆するように。

それでもコットの中ではきっと何かが始まっていた。逃走ではなく、自由に走り回ったコットの夏の思い出を、柔らかく、美しく、詩情に満ちた世界観を見事な対比と、繊細な透明感ある、木漏れ日のような日々をコットの心象風景として、(あの時僕らが感じた宝物のような思い出のような)映像で描き切ったこの映画に拍手を送り続けたい。拍手した足りないほどの大傑作。
余裕で人生ベストムービーの仲間入りです。


ショーンと海辺で交わした「何も言わなくていい、沈黙は悪いことじゃない。」は一生忘れたくないな。沈黙を破り井戸の水を汲む選択肢も、そのまま希望のために沈黙を守り続けるのもどっちも正しいのかもしれない。この夏、能動的に沈黙することを知ったコットの未来に希望が待っていることを願っています。
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