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コット、はじまりの夏のMALPASOのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
3.4
映画『コット、はじまりの夏』

昨年のアカデミー国際長編賞ノミーネート作品。

素晴らしい!

舞台は1981年のアイルランドの田舎。主人公は9歳の少女コット。1人の少女の運命が大きく変わるであろう夏休みの出来事を描く。
牧場の一家に生まれたコットは姉3人の四女。父は飲んだくれで博打好き。両親はネグレクト気味で、コットは寡黙で学校の勉強もあまりできない。
母親が出産を控え、夏休みの間コットだけが親戚の家に預けられる。同じく牧場を経営する親戚夫婦。最初はぶっきらぼうなおじさんだったが、夫婦はコットに対して大事に丁寧に接してくれる。後半、親戚夫婦の悲劇の過去が明らかになる。

おじさんと読む本が『ハイジ』だった。少女ハイジは両親を失い祖父の家で育つ。コットの境遇と似たような物語。

今作がデビューのコット役キャサリン・クリンチの表情で見せる演技が素晴らしい。

原作は、アイルランドの作家クレア・キーガンの小説『Foster』、「里子」という意味。

ドキュメンタリーを制作してきたコルム・バレードの長編劇映画初監督・脚本。

これまでも映画で描かれてきたけど、当時、カトリック教が多く住むアイルランドでは、離婚、中絶が禁止だった。そんな社会背景を知ってみるとコットの家族が置かれた状況も少しわかる。

郵便受けまで走るという伏線、ラストの2つの「ダディ」という言葉にぐっと来る。
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