マカ坊

パスト ライブス/再会のマカ坊のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.5
しみじみ良い映画やね〜…!

あえて三人のうち誰に共感するかと言われれば圧倒的にアーサーなんやけど、それはともかくフレーミングが最高の映画でした。誰と誰がどんな背景の中でどの様な距離で切り取られるのか。本来カメラに映らないはずの"縁"が見事にキャプチャーされていた。

一見淡白な真正面からのツーショットに見えるようシーンも、微妙にキャラクターの重心が非対称だったりして、揺蕩う2人の心情の機微が極めて繊細に掬い上げられている、まさに映画的な映画。

あとやっぱり都市や天候、もっと言ってしまえば「世界」と「個人」の力関係の捉え方が非常に誠実で、だからこそ映画の、あるいは恋愛そのものが生み出す「虚構」がこの上なくロマンティックに浮かび上がってくる。

出来の悪い自然主義文学の様に、安易に風景がキャラクターの心情を代弁したりしない、というマナーを基本的に担保しているからこそ、時折その原則をはみ出して、その瞬間その二人にとってはどこまでも彩に満ちた「世界」というものが存在するのだという事を翻って鮮やかに映し取ってみせる。

やはりグレタ・リーがとても良いけど、フレームの「外に映る」ジョン・マガロに悶絶。切り取られた彼の存在が生み出す緊張感たるや…!
彼が出てるからというわけではないけど、ケリー・ライカートが描く「小さなアメリカ」にも通じるものがある気がするなぁ。音楽的にも今作はグリズリーベアのメンバーが担当したみたいで、インディ文脈的にも近しい雰囲気を感じる。あっちはポートランドでこれはNYやけど。

ウーバー待つシーンの構図とかもさー…奥行きのない背景の手前で向かい合う2人とか、下手したら2Dの格ゲーというか「マトリックス リローデッド」でスミスとネオが公園で向かい合うシーンみたいな対決構造になってしまいそうな所なんやけど非常にロマンティックで…いや、あれはある意味2人にとっての「決闘」だとも考えられるからそういう見方も間違っていないのか…?
そして何と言ってもこの後のアーサーの気持ち考えたらやり切れん…。やっぱりみんな主人公2人に「共感」するんかな?いやそれはそれで勿論わかるんやけど…。アーサー…。

これ一本観ただけやけど、なんとなく世界的に普遍的な恋愛映画の季節が来ているのかも…?
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