マカ坊

彷徨いのマカ坊のレビュー・感想・評価

彷徨い(2023年製作の映画)
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初長編監督作品ですか。ナサニエル・マーテロ・ホワイト。元々俳優なのか。

面白い作品かと聞かれるとリアクションに困るが、個人的には観る価値はある作品かと思った。

かなーり贔屓目に見るならミヒャエル・ハネケやジョーダン・ピールのエッセンスを抽出した(不)条理社会派サスペンスと言えなくもないけど、主題のピントが微妙にボケてる気がするし、演出や語りの構成含めビジュアルコンセプトが絶妙に洗練されてない印象。やろうとしてる事のテイストは好みではあるけれど。

大きくは出自に関わるアイデンティティとそれに基づく過去の呪縛についての物語だが、そこに家庭における"母親"という役割についてのイシューが重なる。そのアイデア自体は現代的で、アメリカでは無くUKの人種、階級問題という点でも興味深いのだけれど、何というか全体的に上手く噛み合ってない気がするんよなー…。演出で語りたがっていると思いきや安易に言葉で説明させたりとか…。

逃れられないアイデンティティからくる抑圧を「痒み」として表出させるのは成る程と思ったけど、それならそれで最後まで活かしきった展開が見たかった。「筋トレ」の用い方とかも嫌な含蓄があって悪くないと思うし、終わり方も嫌いじゃないだけに、全体的に惜しい…。

主人公(が象徴するもの)の背景を想像すると個人的にはそこまで「胸糞」とは思わなかったけど、そういう感想が多いというのはやっぱり作り手の意図通り、というわけでは無さそう。知らんけど。
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