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ミュージックのsonozyのレビュー・感想・評価

ミュージック(2023年製作の映画)
4.0
引き続き、印象的なタイトルとジャケのアンゲラ・シャーネレク監督の新作を。
こちらもベルリン国際映画祭で銀熊賞 最優秀脚本賞を受賞してます。

『I Was at Home, But』以上に、人物像、関係性、ストーリーが断片的・暗示的なので、観る側の想像力で補完する(と言っても補完しきれない)作品でした。
ギリシア悲劇の代表作とされる「オイディプス王」を監督ならではの感性で翻案されているという情報を入れて観ても(といっても、“知らずして父ライオス王を殺し、母イオカステを妻とした悲劇のオイディプス王”程度の情報を確認した程度)、観終えた後で情報を確認して、あーあれがそういうことなのか...と追認する点もあるものの、彼/彼女のあの行動は?あの音は?あの人は?...と解明しない要素もそこかしこに。

タイトルとなっている「Music」も中盤まで一体どこに?状態なんですが、中盤からとても印象的に、そして美しくもやや不安定/不協和な音も含む魅力的な曲/歌に心掴まれます。

オイディプス王にあたる足の炎症が治らないJon(ヨン/イオン)役のAliocha Schneiderはカナダの俳優/ミュージシャンということで美しい歌声に納得。母イオカステにあたる刑務所の看守Iro(イロ)役のフランスの女優アガト・ボニゼールも適役です。

足や手のクローズアップや、何を見ているのか分からない視線、映像の外の音で想像力を働かせられるフィックスの長回しなどの監督お得意のシーンも印象的ですが、Jonが刑務所から出所する際の扉、看守の女性たちの卓球、海に入る時に脱いだ服の上に置く石、Jonが娘を学校に送るために使うキックボードと台車を合体したような乗り物..など、ちょっと可笑しみ漂うシーンも印象的です。

トレーラー
https://youtu.be/mA9zVCsDwQA
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