柏エシディシ

オール・ザット・ブリーズの柏エシディシのレビュー・感想・評価

オール・ザット・ブリーズ(2022年製作の映画)
3.0
大気汚染の進むインド・デリーで野生のトビの保護活動をする兄弟に寄り添ったドキュメンタリー。
今年のアカデミードキュメンタリー部門ノミネート作品で気になって鑑賞。
ドキュメンタリーでありながら静謐なドラマを想わせる、揺蕩うようなカメラと起伏の少ない穏やかな語り口が特徴的。
饒舌にメッセージを主張したり、ドラマティックな演出も殆ど無い。ある意味詩的ですらある。その余白から何を受け取るかが観客に大きく委ねられており、ある意味ドキュメンタリーの本質に忠実であるのかもしれない。
治安悪化で今目の前の日常も危うい中、野生動物を救う活動をする意義とは?という静かな葛藤。
しかし、それこそトビに限らず小さな昆虫や爬虫類、通りを闊歩する牛達など、ごく自然に動物達が息づく情景が並行して語られる中、自然環境を守ることが、自分達の世界を守ることと無縁では決してないという当たり前のことが主題として浮かび上がってくるように感じた。
環境保護活動やSDGs的意識を揶揄する昨今の風潮を思うと、インド・デリーという土地に限定されない、普遍的な問い掛けが根底にあると思う。
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