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かあちゃん結婚しろよのakrutmのレビュー・感想・評価

かあちゃん結婚しろよ(1962年製作の映画)
3.6
新潟の漁村を舞台に、甲斐性なしの夫と別れ、一人息子を女手ひとつで育てながら飲み屋を営む女性の再婚やそれに関係するエピソードをほのぼのとしたタッチで描いた、五所平之助監督の人情ドラマ映画。原作は、檀一雄の『海のある窓』という小説。日本映画専門チャンネルの蔵出し名画座にて放映。

漁師の男性との再婚が決まり、映画のタイトルどおり息子も賛成してくれた矢先、別れた元夫が突然訪ねてきて、金の無心とともに復縁を迫るというストーリーは、先の読めるありふれた内容である(でも檀一雄をこんな物語を書いていたことに結構驚く)が、本作の見どころはそこではない。主人公の女性を演じた新珠三千代の魅力に尽きる。蔵出し名画座の解説でも言及しているように、愛人とか夜の女性とかどこか影のある女性を演じることの多い新珠三千代が、バツイチという影はあるにしても、そんなことを感じさせない明るく真っ当に生きる女性を生き生きと演じていて、彼女のみせる表情は可愛らしくもある。宝塚出身の日本美人であるが、その良さを堪能できる作品だろう。

ちょっと不満だったのは、母親思いながらも父親の幸福も願う息子の複雑な気持ちをきちんと描きながらも、その気持ちを捨てるほうが良いと言わんばかりのラストに向けての展開。当時は映画の与えるカタルシスとしてこういう疑似ハッピーエンドが一般的だったのだろうが、今だとこの結末は単純すぎる。一人息子役の謝春国の演技がよかっただけに、もっと息子の気持ちに寄り添った展開もあっただろう。

新珠三千代の再婚相手役を演じる田村高廣もいつもの雰囲気と違って良かったが、北方のほうへ漁に出てしまうので、映っている時間はそれほど長くない。意外にも、教師役の津川雅彦がかなり重要な位置を占めている。元夫を演じている伴淳三郎の演技はちょっと硬質。もっと枯れた演技のほうが好き。元参議院議員の中山千夏が、東京のこましゃくれた少女役で出ている。
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