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ラブetc.のakrutmのレビュー・感想・評価

ラブetc.(1996年製作の映画)
3.5
新聞の恋人募集欄で知り合ってカップルとなる男女とその友人の三角関係を描いた、マリオン・ヴェルヌー監督の恋愛ドラマ映画。マリオン・ヴェルヌーと言えば、自身のアメリカでのウェイトレスの経験をもとに監督デビュー前に書いた脚本が、ソフィー・マルソー主演の『パシフィック通り』(邦題は誤訳!)という映画になっている。元夫は、仏映画監督のジャック・オーディアールである。

原作は、イギリスを代表する作家ジュリアン・バーンズの小説『Talking It Over』(邦題「ここだけの話」)である。この小説の仏訳版のタイトルが本作と同じ『Love, etc.』であり、フランスの文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を受賞している。さらに、この小説の続編(3人の10年後を描いているらしい)として、『Love, etc』というタイトルの小説が、本映画公開後の2000年に出版されている。

原作の小説は三角関係にある3人がそれぞれ一人称で独立に読者に語りかけるという斬新なスタイルが評価されたが、その斬新さを映像化するのは、一応3人がそれぞれ心の内を独白するシーンを挿入してはいるけれど、難しかっただろう。というか、最初からそんなことは意識していなくて、文学賞まで受賞したベストセラー小説を映画化してみましたという程度というのが現実なのかもしれない。

なので、映画の出来としては平々凡々である。終始、頭の中に霧がかかったような展開で、特にシャルロット・ゲンズブール演じる女性・マリーの心境がもやもやしていてよくわからないままなのが、何もかもがはっきりくっきりとクリアならば良いわけではないにしても、個人的には不満だった。そんな中でも、イヴァン・アタルが演じるこれまたもやもやした男性・ブノワが最後に爆発するシーンは、唯一スカッとする見どころかも。合理的に理解できるという意味で最もまともなのが、友人の妻であるマリーを好きになってしまうブノワの友人で教師のピエールというのが逆説的で面白い。すでに恋人どうしであったシャルロット・ゲンズブールとイヴァン・アタルがお目当てでなければ、特に鑑賞しなくても困らない作品と言える。

映画全編を通じて、ショートカットの茶髪が似合うシャルロット・ゲンズブールが可愛い。主題歌を歌う声までも可愛い。さらに、惜しげもなくヌードを披露している。この程度の作品でそこまでしなくてもと思うのだが、どんな作品でも全力で演じるのが彼女の魅力でもあり、多くの監督に好かれる原因なのだろう。個人的には、もっと仕事を選んでもいいんじゃないと言いたくなるが。

ピエールにアタックする美形の女子高生役を演じているのは、本作が映画デビューとなるエロディ・ナヴァール。先日鑑賞した『画家と庭師とカンパーニュ』にも出演していた。
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