イージーライター

ソウルメイトのイージーライターのレビュー・感想・評価

ソウルメイト(2023年製作の映画)
4.5
空いた時間で何を見ようかとの消極的選択、そしてジャンルで言えば少女の友情ものと聞いて、全く期待せずスクリーンの方を向いていたのだが、これは掘り出し物だった。

主たる登場人物は二人の少女であり、そしてそれらが成長した女である。ミソという少女が小学生の時、身勝手な母親に連れられソウルから済州島に来る。登校日初日から奔放な行動のその少女と、両親の愛情たっぷりにこの済州島で育てられたハウンとは、その日のうちに意気投合し、親友を互いに名乗る仲になる。二人は成長し、恋をして、進学、そして済州島をでる日が来るというあたりは、王道的ストーリーである。

また、映画の舞台となった時代の、流行の唄、アイテムを映画の小道具を差し込み、観客の憧憬を誘うというところなんかも、定石を外していない。これらの作りだけならば、良くて、まあ退屈せずに時間を過ごせた映画で終わっていただろう。

しかし、ミソとハウンの半径何メートルのドラマで閉じていないところが、この映画の魅力である。小さな世界は、女の子が大人になる過程での、自由への渇望という要素がドラマに加わる。自由をテーマに入れたことにより、半径何メートルからのドラマではなくなった。

自由と言っても自分を束縛する社会とか因習とかそんなに大層なものではない。あくまで自分を縛るものからの解放といった類である。ミソはハウンよりも先にその自由を体験する。ハウンはさて、というところだが、友情と自由という、2つの価値観をテーマにするという滅多にないこの映画は、滅多にない分、最後の最後まで、話の行き先を読めず、飽きさせない。また回路が開いた物語であるがゆえに、例えば、女の友情もののというジャンルで括って観客の幅も狭まるようなことにはなっていないだろう。

冒頭の済州島の伸びやかな自然を織り込んだ絵としての美しさも含めて、強くおすすめしたい作品である。