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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のarchのレビュー・感想・評価

4.3
本作を鑑賞後、家に帰って夕寝をしていると 家族の住む家が爆撃され、土砂降りの中腰まで水につけて避難している夢を見た。(なんか知らない家族がプラスされてたけど)

目が覚めた時、あぁ夢でよかったと安堵したが、同時にこれは現実に起きていることなんだと、安堵してしまったその他人事感含めて深く落ち込んでしまった。



あらゆる映像の信憑性を否定出来る時代に、この映像は今現在行われているジェノサイドを確かな真実として見せてくれる。
構成はシンプル。20日間を時系列で見せていく。そしてその映像が確かに世界に伝えられたということを強く印象づけてくる。
20日の追体験というわけではない。それはまず映像さくひんでは不可能なことだから。それよりも如何にマウリポリが戦火にのまれていくのか、前線の進行などの状況の変遷、現場の混乱を伝えてくる。
中でも撮って欲しい 見て欲しい という意志を撮るのだ。この自体が情報戦によって全く世界に認知されていない中、その場にとどまった記者とカメラだけが事態を伝えられる。
だからこそ撮ってくれと懇願する。
最初は兵士たちの中には撮られたくない人もいるが次第に自体は加速し、そういう次元の話ではなくなっていく。

カメラは加害性がどうしても伴う。だがそれでも回さなければいけないのは、その加害性以上に「真実を記録し、伝える力」 が発揮されなければならないときだ。
そしてその時初めてドキュメンタリーとして機能する。


アカデミー賞受賞時に「そもそもこんな映画生まれなければよかった(戦争が起こらなければ良かったの意)」とスピーチした場面が忘れられない。これを映画にする意義、ジャーナリストとしての意義、撮る中で苛まれただろう無力感がこの映画を通して伝わってくるようだった。
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