第96回米アカデミー賞国際長編映画賞アイスランド代表作品で、ショートリストにも選出された作品。
前作、短編の”Nest”も見たが、時間を存分に使った定点カメラと360度全景を映したアングルが今作でも変わらず特徴的だった。
デンマーク人の若い牧師ルーカスは馬で越境しアイスランドへ向かう布教の旅に出る。そりの合わないガイドとデンマーク嫌いの老人に連れられて向かうが彼の神経は次第にすり減っていく。
何か牧師ルーカスの偏屈さや頑固さは死臭を漂わせるものだった。私も留学経験が長いので思うが、他者のアイデンティティに合わせるのは自分のアイデンティティをなくす行為である。なるべく避けたい。周りのアメリカ人がホテルのリネンをグチャグチャにしていても私は日本人として畳みたい。だが、それをアメリカでやり続けるのは果たして正解か。頑固に見えるルーカスの胸中を思うと苦しいが、彼は自分を守った結果どのコミュニティからも孤立し、彼の精神はズタボロになってしまった。
