たく

ゴッドランド/GODLANDのたくのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
3.8
教会建設の使命を果たすためアイスランドに赴くデンマークの牧師の過酷な旅と驚くべき顛末を描いてて、聖職者だって結局は一人の人間なんだと言ってるような話に考えさせられた。男二人のディスコミュニケーションには「イニシェリン島の精霊」を連想。独特な映像が印象的で、時の経過を無慈悲に示すカットの連続が目に焼き付く。ところどころコメディ演出が入って何とも不思議な作品だった。

冒頭で牧師のルーカスが司祭からアイスランドの教会建設の使命を与えられるくだりで、司祭が茹で卵の殻を割って食べ、リンゴの皮を自分で剥きながら話す姿が何だか可笑しい。この後にルーカスが司祭の記念写真を撮ってタイトルが出るタイミングが、本作に漂う不思議な雰囲気を暗示してた。司祭から「君ならきっとやり遂げられる」と太鼓判を押されたルーカスが、いざ旅を始めてみればトラブル続きとなる。デンマークを嫌うガイドのラグナルが頑なにデンマーク語を離さず、わざとアイスランド語で話しかけてきて要領を得ないし、ルーカスが馬の扱いに慣れてなくて旅のお荷物になるという、踏んだり蹴ったりの状況に陥るのが見ちゃおれない。

過酷な旅路にルーカスの体調がどんどん悪化し、彼が神に対して愚痴をこぼすのが笑ってしまう。ここから万事休すとなったルーカスがついに旅団に見捨てられるシーンで、カメラがゆっくり一周する長回し映像に息を呑む。このあと火山噴火の溶岩の映像が圧倒的迫力なんだけど、よくこの映像が撮れたなーと感心してしまった。おそらく本作は何年もかけて撮影されてて、慎重にタイミングを伺ってたんじゃないかと想像した。

ルーカスが村の人に救助されてから作品のトーンがグッと明るくなり、彼を救った一家の長女アンナがアイスランド語よりデンマーク語が好きなのが、ルーカスにとってようやく訪れる救いとなる。地元民の婚礼の賑やかな様子が楽しくて、ここでもカメラが一周する長回しが使われてた。ルーカスの立ち居振る舞いを見るうちに自分も聖職者になりたいと思い出したラグナルが、ついにルーカスに対して懺悔したことが仇となり、彼を許せないルーカスの行為が神に見放された感じの救いのないラストが切ない。
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