たく

2つの人生が教えてくれることのたくのレビュー・感想・評価

3.8
希望に満ちた女子大生の目の前に拓かれた2つの正反対な人生の可能性を並行して描いていく作品で、どちらの生き方を選択したとしても、最後に自分の人生を納得できるかどうかは己の覚悟次第という普遍的な話になってた。本心では惹かれ合ってるのに理性が邪魔して結ばれないという展開は、それだけでも1本の作品になりそうで、鑑賞後に充実感が残った。リリー・ラインハートはテレビドラマで有名になったみたいで、たしかにいかにもドラマに登場する役者さんって雰囲気。映画では「ガルヴェストン」「ハスラーズ」「ケミカル・ハーツ」に出てたんだね。「ケミカル・ハーツ」を観た時に彼女のことを絶賛してたのに全く忘れてた。

大学卒業後に5年計画でアニメーターとして成功するという人生設計を持つナタリーが、心から信頼を寄せる友人のゲイブと卒業直前の高揚感から勢いで一夜を共にしてしまう。ここからナタリーが妊娠出産して子育てに励む人生と、妊娠せずに計画通りアニメーターを志す人生がそれぞれ並行して描かれていき、一見すると妊娠したことで彼女が夢を諦めざる得ないのが人生の敗者のように思えるのが、実はそう一筋縄には行かないという展開。ナタリーがゲイブに妊娠の責任を全く追及しないのが物分かり良過ぎないか?と思ったけど、ゲイブはゲイブでちゃんと責任を取ろうとする言動を見せるところに彼の誠実さも示されてた。

計画通りロサンゼルスに移り住み、憧れのクリエイターの下でキャリアをスタートさせたナタリーが、恋人とのすれ違いに加えて自己の創作のオリジナリティーの欠如という思わぬ壁にぶち当たる。いっぽうで子を授かった人生を歩むナタリーは、子育てに苦労しながらも両親とゲイブの理解を得て、これも悪くないんじゃないかと思わせる環境が整って行くのが、人生これが正解という決まった道はないんだという描き方になってた。それぞれ紆余曲折はあったにせよ、自分が心から望めば最後には夢を掴むことができるという希望に満ちた幕切れにジーンと来る。ナタリーが「千と千尋の神隠し」を絶賛するシーンがあり、やっぱり宮崎駿は世界的な巨匠なんだと改めて認識させられた。
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