ワーキング・タイトルが「The Interpreter」だったそうだが、実際この映画、通訳者ダール・サリムのキャラクターがかなり良い。「通訳」描写を通して、彼のクレバーさ、または肝の据わりっぷりを、登場人物よりも先に観客が知る作りになっている。
長い長い逃避行のシーンも見どころたっぷり。(そこまでフィルモグラフィーを追ってきたわけではないが)あのガイ・リッチーがこんな実直な演出を! と何度も驚かされた。後に描かれる、タリバンの追手をやりすごすワンシーンワンカットの演出も効果的で素晴らしい。
一方後半はジェイク・ギレンホールの出番で、いやーこれまたいい仕事をしますジレンホールさん……いつもながら、目から伝わる執念がものすごい。
また、彼を助けるはずだった傭兵(?)アントニー・スターもおいしいキャラで良いですね。
スローモーションが多いのはちょっと苦手だが、まあ些末なこと。
ダール・サリムの初登場シーンは、車のサイドミラーに映ったジェイク・ギレンホールとの会話。これもあのガイ・リッチーがこんなことを、と驚くような演出だと思った。軍施設内での夜の会話、アフガニスタンに戻ってからの会話、輸送機内の視線の応酬……いずれも内側からの切り返しだったと思う。どのシーンもとても印象に残る。