まさに自分のための作品だった。作者のパジトノフが主役だと思っていたら、あのヘンク・ロジャースだったからだ。誰も気に留めていないだろうが、ヘンクはあの国産RPG黎明期の傑作「ザ・ブラックオニキス」の製作者。(劇中でも一切語られていない…。)幼少時からPCゲームに慣れ親しんだ自分にとって、敬愛してやまない人物の一人。本作では、そんなヘンクの視点でテトリスのライセンスにまつわる当時のややこしい事情を映像化。正直、興味のない人には全く刺さらない内容ではある。だからといってカタい再現VTRのようなものではなく、言葉の通じないモスクワで着用しているリーバイスを奪われたり、女性通訳とのロマンスやちょっとしたカーチェイスもあったり、キッチリ一本の映画として成立している。後に会社を立ち上げるパジトノフとのゲームを通じた友情物語だったりもするので、ヘンクを主人公に据えたのはまさに慧眼。(テトリスの4列消しアイディアはヘンクというのはたぶんウソだと思うが。)ボーナストラックでは生のヘンク・ロジャースも拝めるので、ブラックオニキスのイロイッカイズツで苦しんだ人は見るべき。ヘンクはテトリスをプレーしただろうけど、パジトノフはザ・ブラックオニキスをどう評価したのかぜひ聞いてみたい