“僕はそんなに強くない。でも君は簡単に傷つける。”
久々にセンスの塊台湾映画。今の時代にしっかりエドワード・ヤン味を纏いつつ、現代風のテーマと演出が絡み合って映画的完成度が半端なかったです。エンディングの余韻が凄い。
偏見のある田舎の村を出て都会で男娼として暮らしいているフェイ。同じく男娼のシャオレイと恋に落ちるが、フェイを悪質な客から守る代わりにシャオレイは足を折られ、そのまま二人は離れ離れとなってしまう。5年後、30歳になったフェイは杖をつきながら歩くシャオレイと再会するが、彼にはもう妻と子供がいて…。
男娼の主人公ではあるのだけど、直接描写もキツくないし、それよりも“ミステリアス・スキン”のような言葉ない痛みが漂う雰囲気に浸る。シークエンスがほとんどワンカットで撮られていて、人物のフレームイン、アウト、画面外からの雑踏が心地よい。主人公の葛藤だけというよりは、田舎町の窮屈な環境で模範解答通りに生きる姉、偽装結婚で子供を作り都会を去ると決めた同僚、気づいたら憧れが恋愛になっていた同郷の青年、それぞれに深入りしすぎずあくまでも客観的に感情の切れ端を写していく。誰もが自分を売って生きている。特にロン役のバイ・ユーファンがいい味出してた。
劇中で印象的なクラブダンスシーンの曲“hello, anxiety ”はタイのアーティストなんだって。ジャミロクみたいにカッコいいソウルポップだったからすぐダウンロード。このエモい気持ちと共にしばらくヘビロテします。