みむさん

Unruly(英題)のみむさんのレビュー・感想・評価

Unruly(英題)(2022年製作の映画)
3.8
ヨーテボリ映画祭にて。

デンマークが女性に強制不妊手術を施していた1930年代が舞台、ウーマンハウスと呼ばれる施設に収容された女性たちの話。不条理すぎる政策の犠牲者たち。

「ペルソナ・ノン・グラータ」や「コペンハーゲン・カウボーイ」のサラ・イザベラ=ジョンソンが脚本に携わってる。この2本と本作、どれも女性にまつわる作品。

素行問題や知的障害があったりして疑わしいとされた女性を収容する矯正施設、退所時には強制的に不妊手術を受けさせられる。
こんなことがデンマークにあったのかと。そういえば「特捜部Qカルテ番号64」でもこの話は取り上げられてた。

マレンはややお転婆で反抗的な年頃、少々心配はしてもそんなに目くじらを立てるほどでもないんじゃないの?とは思うが、この時代のデンマークはそれで問題ありとされてしまう。
それで躾を学んで帰ってくるならよかったが、妊娠した女性は子供を産んでも引き離され、さらに不妊治療させられる。
そんなのってあってはならないと思うが実際にあったから驚く。

大人しくて従順な女性が求められ、個人の意志は葬られる。外面や表面的な体裁は良い施設でも、入所した女性たちにとっては夢も希望もない。出所してもかつて引き離された子供と会える保証もない。絶望的だった。

あきらめて施設できちんと過ごす者もいるが、どこかに疑問は持ったままだったのだろう。
マレンが入所してから少しずつ彼女たちの気持ちに変化があったようだが、それでも国が決めたことに反するのは想像以上に困難で、究極の手段をとらざるを得ない者の姿に心が痛くなった。

その彼女のおかげで少しずつ事態は好転したかもしれないが、もう過去は取り戻せないし妊娠もできない。

光が見えるものの、そこに至るまでに大勢の犠牲者(母子を引き離される、強制不妊)があったということで、何とも言い難いどんよりした思いのままだった。