かな

夜明けのすべてのかなのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

原作読了。原作と映画では変更点が多々あり。ただし、全体的のメッセージ性や空気感は変わらず、原作は原作、映画は映画、で楽しめると思う。原作のエピソードが映画における登場人物の日々にあったら…と想像するのも楽しい。

始まりは暗い雨の中、藤沢さんの語りベースで幕があけるが、前半は藤沢さん山添くんの「自分ではどうにもならない」ことがまざまざと描かれていて両者の演技力もあいまってなかなかしんどかった。新入社員という立場の中、イライラを押さえきれなかったり自分をコントロールできなかったりするところではなんだか自分のことのように苦しくなった。

栗田科学に転職してからの日々の描きかたは、街の光が印象的だった。山添くんが藤沢さんのスマホを届けにいくときの光をたどって向かうような構図や、休日に2人が出社して原稿を考えているとき、部屋の電気はつけず手元のライトで作業しているときの絶妙な距離感、雰囲気、藤沢さんがベランダに出るシーン、など。

パニック障害を患ったけれど、山添くんは普通に行きようとしているし、藤沢さんも月に一度以外は全く普通。
突き抜けた配慮や気遣いではなく、あくまでもそのまま相手に寄り添う、ふんわりとしたやさしさが劇中の誰に対しても感じられて、誰もが何かしらは感じているであろう色々な「生きづらさ」がこの映画によっていくらか消化されていくような感じがした。

全部が全部解決しているわけではないけれど、確かに「助けられることはある」。人生はそれを繰り返していくものだと思った。

移動式プラネタリウムのナレーションがとても素敵で、それを聴いている山添の表情もまた素敵だった。
気力なく働いていた山添くんが、元上司の前で生き生きと仕事について語っていたシーンにぐっときた。グラデーションのように人物の心情を演じられるのが素敵。

ケイコ~でも思ったが、過剰なBGMがなくて、生活音やピアノの音が印象的。雨音がポツポツと落ちるようなメインの旋律が印象的でよかった。

・みかん食べながら歩く藤沢さん
 お守りそんなに買う!?
・流し込むには意外と量のあるポテチをざらざらと流し込む藤沢さん
かな

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