この手の「現実に存在する苦悩」を描いた作品はやはり原作の方が優れているんだと書籍・映画の両方を鑑賞して改めて感じた。
映像表現をする場合には時間の制約、出演者の制約、美術表現の制約などかなり制約が多い。
時間に関しては2時間程度に収めるにはあらゆる部分の編集作業が必要なこと。そして、出演者と美術に関しては美男美女を起用したり安アパートの割には内装が綺麗だったりと、原作にはないリアリティから外れたデフォルメが映画には存在することが挙げられる。
とはいえ、全部詰め込んで超大作にして普通の男女がボロアパートでやり取りしているのを一体どれだけの人が観てくれるのだろうか。すぐに映画産業が破綻してしまう。
なので、この手の映画作品は「100分de名著」的なあくまでも原作の入門編と位置づけることでスッキリと楽しめるのだと思う。
そういう意味で、原作ではいきなり髪の毛を切り出す藤沢さんの奇行をマイルドにアレンジしていたりと色々脚色として良かった部分も多いと思う(エンディングで髪の毛を急に切りに来た原作の設定に戻ったセリフは残念だったが)