磯野マグロ

夜明けのすべての磯野マグロのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2
【この映画好きだなー】40

病気についての映画なんだろうと思ってみたら、これはかなりな部分、「お仕事」の映画だった。若くても若くなくても、周りから仕事と思われるようなことをしていてもしていなくても関係なくて、人生が社会と接点を持つとき、それはもうすべて仕事だと言っていいと思っている。だからこれはお仕事映画だし、実際映画の大部分はお仕事の場面。藤沢さんも山添くんも、良き場所を得てゆっくりと自分を受け入れることで仕事が好きになっていき、やがて生きることが好きになっていく。それは栗田科学のみんなもキーさんもたぶんロンドンに行っちゃった元カノ芋生さんだってそうで、受け入れ難い事実を抱えながらも、みんな誇りを持って生きている感じがしてとても気持ち良いし温かい。
そして、声高でなく静かに各方面に心がめちゃくちゃいっぱい使われている映画で、配役もそうだし(あの中学生コンビよかったなー)、細かいところでは子育てまっさかりの転職エージェントさんとか、あとはなんといっても、いつになったら着るか気になって仕方なかった山添くんの栗田ジャンバーとか、藤沢さんのみかん食べ歩きとか、物語の途中で藤沢さんのお母さんが倒れちゃうんだけど、そのときにああそういえば、と藤沢さんがピルを飲めない理由が思い出される、などなど構築された映画内世界の整合性と解像度が半端ない。三宅唱うますぎです。
このテーマならきっとチュプキでUDキャストでかかるだろうから、そのときにもう一度見よう。
磯野マグロ

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