このレビューはネタバレを含みます
主題は「人の痛みは見えづらい」ということ。
「持病」であることは確かだけど、ちょっと気分が悪いとか「病気」と言えないような、まわりに言っても理解されない、言ったところで押し付けがましくなってしまうし気を遣わせてしまう、だから言わないし我慢する、そんな辛さをひとりで抱えて生きる、みたいなことはみな誰しもあるんじゃないかなと思う。
PMSの苛立ちも、パニック障害も目に見えづらい。理解されづらい。でも確かに辛いもの。人それぞれに症状はさまざまで、痛みを抱えながら生きている。家族の不幸を乗り越えようとする人々の姿からも、人はみな分からないようで、それぞれに負を抱え、必死に向き合って生きているということが分かる。生き辛い人たちを受け入れてくれる栗田科学さんも素敵。
当事者じゃないと分からないけれども、推し量って、理解しようと努めることはできる。ちょっとだけ誰かを想い、やさしくなれる気がする、そんな映画。
藤沢と山添の友情があたたかい。後半、パニック障害だから平日やる気ないけど土日出社したくなるとか、PMSだからなんでも言っていいとか、お互いの病気を少しだけイジれるようになった関係性も美しく微笑ましかった。
ふれあいを通じて山添の中も会社の人にやさしくできたり、心境の変化が見られるのも素敵。
全体的に世代や男女など価値観の押し付け、決め付けがなく、それがそれとしてただ描写されていて、好感が持てる。藤沢と山添の異性の関係性のようなものに変な茶々入れ、匂わせのような萎える描写もないし、栗田科学も言ってしまえば昭和の昔ながらのアットホームな会社だけど、だからといってそれに対した偏見やアンチテーゼ描写がない。かと言って綺麗事化しているわけでもない。栗田社長も会社の同僚も、山添の元上司も、みんなまとも。全体を通してまっすぐ曇りなく丁寧に描かれている印象があって、作品を作り出すこの雰囲気が、テーマにもマッチしてこの作品たらしめているのだと思う。
「栗田科学のいいところを教えてください」
「人は見かけによらないというか、第一印象はアテにならないなと感じています」
北極星は方角を教えてくれる親切な星。