東日本大震災後。震災以来TVの前でニュースに憑りつかれていた妻が突然置手紙を残して失踪し、途方に暮れていたところ友人の頼みで釧路まで訪れることになった小村。同じ頃、アパートに戻ると待ち受けた巨大なカエルに地下のみみずくん退治への協力を求められた片桐。震災を経た人々に訪れる奇妙な出来事の数々を描くアニメ映画です。
アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた『飢餓』らで知られるピーター・フォルデスを父に持つピエールが村上春樹の震災を主題にした幾つかの短編小説を組み合わせて映画化した作品で、表題の一遍に『UFOが釧路に降りる』『かえるくん、東京を救う』を中心とした物語のリンクが評価されてリュミエール賞にノミネートされました。
意味なさげなものに意味を付け、意味ありげなものから意味を奪う村上文体を歪な物語と映像を駆使して巧みに表現し、観客が各々の解釈で「意味」を探すよう促します。果たしてそれにはどの程度の意味があるか。それを考えるのはカエルを解剖するようなもので、理解に至るかもしれないが、その過程で対象は死んでいく気がする一作です。