故ラチェットスタンク

食人族4Kリマスター無修正完全版の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

4.1
『ゲロの出る映画は傑作だ。』

と、人々は口を揃えて言う。実際それはそうである。以上は他愛のないジョークであるが、実のところ私はいくつかのゲロの出る映画に少し腹を立てている。一口にまとめると「安易にゲロを吐かせるな。」ということである。これはつまりそう言うことだ。そうだ。これは妄言だ。これは暴論だ。

 私は気管が弱い。何故だかは知らない。何にせよ生まれつきそうだった。仰向けに水中に潜ろうものなら即刻鼻の穴に水が入って鼻腔から食道にかけて体内が大パニックになる。それが怖くて背泳ぎも碌に出来ない。とりわけ最悪なのは嘔吐である。普通はゲロを出すのは口だ。しかし、私の場合は鼻と口からゲロが出るのだ。吐いても全くスッキリなんてしない。吐瀉物が便器の中を混沌に染めたあと、必ず鼻の奥にそれが少し残る。胸糞ならぬ鼻糞が悪いと言うやつである。やかましいわ。

 事程左様の事情から、私は安易にゲロを吐く映画が嫌いだ。確かに見た目は映えるだろう。グロテスクさが伝わるだろう。だがそう言う映画はきっと鼻から出るゲロというものの不快感を見落としているし、そういう人たちからの正常にゲロを出せる人への羨望の眼差しというものを忘れている。

 この映画は登場キャラクターにゲロを吐かせた。レーザービームのような、直線的なそれだ。とても見映えが良かった。私はそれに腹が立った。羨ましかったからだ。と言うことで、安易にゲロを見せる映画に私はこれからもイライラし続ける。

映画自体には特に言うことない。かなり笑えた。以上。