故ラチェットスタンク

テルマ&ルイーズの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)
4.4
『楽しいしゅうまつを!』

 単純な被害者と加害者の二項対立に持っていかないのがとにかく良いと思う。当然、ブラピやらトラックの運ちゃんやらレイピストやら彼女たちを貶める加害者たる男性陣も大概最悪なのだが、テルマとルイーズにもそれなりのふしだらさと奔放さがあり、危うい。銃によって加害性が引き出され、更に危うく走って行く。映画を通して、追い込まれた彼女たちが「一線を踏み越える瞬間」を何段階にも分けて描いているのも丁寧だ。暴発に始まって徐々にタガが外れていつの間にか暴走して後戻りできない所に来ている。何だかとても身に覚えのある感覚だった。

 内向きな物語化と水平移動(と落下運動)によってラストの映画的な飛躍が撮られているカタルシスの一方で、コトのあまりの悲惨さに打ちのめされてどうしようもなかった。自分の中に銃を構える警官も車を追いかけるハーヴィー・カイテルも手を繋いで走って行くテルマとルイーズも全員居て胸が張り裂けそうだった。

 見終わって思ったが『テルマ&ルイーズ』と『ファイト・クラブ』を足して二で割ると丁度『天気の子』になりそう。不況・貧困・格差と被抑圧者の感情の暴発。逃避行・暴走が前者、都市と男女関係は後者から。両者を「銃」「手を繋ぐ」という共通項が結んでるイメージ。

Everything’s Gonna Be Fine.