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オクス駅お化けのnetfilmsのレビュー・感想・評価

オクス駅お化け(2022年製作の映画)
3.8
 ある日、オクス駅で無残な人身事故が起きる。被害者は女性だが明らかにその動きはおかしい。駅員が駆け付けた時にはもはや手遅れで、彼女の身体がグシャリと踏みつぶされるように不気味な音を立てる。駆け出しのウェブニュース記者のナヨン(キム・ボラ)はいかにも現代的な20代の若者で、SNSでアクセス数を稼ぐため、ボーイフレンドというよりは友達以上恋人未満のウウォン(キム・ジェヒョン)を助手として、地下鉄オクス駅での人身事故の記事を書くことにした。然しながらこの不気味な事件を取材していくうちに、被害者以外に線路に子供がいたという奇妙な目撃談が多数出て来る。何と言うかJホラーそっくりな周辺(側)の映画である。またある目撃者は、取り憑かれたように謎の4文字の数字を連呼する。私は映画を観る前に予備知識を極力入れないためかまったくわからなかったが、エンドロールに高橋洋と白石晃司の名前を見てひたすら驚いたのだが、今作の脚本をJホラーの代表的な作家である高橋洋が書き、何割くらいかはわからないがその補足リライトを白石晃司が手掛けたという。しかも当初は高橋洋・脚本で監督は清水崇で決定していたらしいのだが、村トリロジー3部作で多忙につき降板したという。

 然しながらそれなら監督も高橋洋にすれば一石二鳥だったように思うが、韓国側の出資者が難色を示した辺りが大変残念だ。だがいつものおどろおどろしい脚本は正に高橋洋で、オクス駅で起きた人身事故から霊の存在がクローズ・アップされ、やがてこの駅の地下で起こった忌々しい出来事が明らかにされる。何と高橋洋は今作のベースにあの「寿産院事件」を置いているらしいと聞き、心底とち狂っていると思った。戦後混乱期の只中の1948年1月、東京都新宿区の助産院「寿産院」で嬰児の大量殺人が発覚したあまりにも傷ましいこの事件は、1人の助産婦によって起こされた。未婚の男女の間に生まれ、始末に困る私生児を預かって寿産院で養育し、子供を欲しがる者に斡旋する孤児ビジネスに手を染めた夫婦は警察の調べでは84人もの人々を殺したという昭和の凄惨な事件を韓国産ホラーに移植する。そうして出来上がった映画は二層構造で、前半の廃駅から中盤にトイレなどを交えながら、後半に井戸に辿り着く展開はまんま『リング』で90年代のJホラー・ファンは留飲を下げる。そこにいかにもな韓国社会の社畜的な現状を織り込みながら、呪いをなすり合うクライマックスのスリリングな攻防は最も高橋洋色薄めないかにも韓国映画らしい結末に思える。駅のアナウンス音を聞いた人が漏れなく感染するアイデアも当初はあったようで、高橋洋ファンとしてはそちらも観てみたかった。
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