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本日公休のコマミーのレビュー・感想・評価

本日公休(2023年製作の映画)
3.9
【時代が変わっても、今日も変わらず丁寧に】



※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞





台中にて40年間も"理髪店"の店主を務めてきた"アールイ"。そんな彼女が営む理髪店には遠くから来ていた"常連の歯医者"がいた。だがそんな古い常連さんが"病に倒れた"とアールイに知らせが入る。そしてアールイはその人の為に、店に「本日公休」と立札をかけ、同じく何年も乗っている愛車のボルボに乗り、少し長い旅に出る。

本作の主人公アールイのモデルは、今もなお同じ場所で散髪を続けている"監督の母親"である。そして本作の撮影も、実家の本当の理髪店を使って撮影された。ここでも見てとれる通り、本作には監督の"家族への愛"や"変わらぬものへのリスペクト"が極めて大きく刻まれていた作品だったと言える。
そして本作は文字通り、病床の常連さんのとこまで愛車のボルボで駆けつける"ロードムービー"としての側面を持っている。台湾の人々の"人情や優しさ"が道行くところを通してこれも優しく描かれており、且つそこでも、時代の変化も感じさせるところもまた良かった。

よく知らなかったのだが、本作の主演の"ルー・シャオフェン"は、"約20年ぶりのスクリーン復帰"なのだと言う。にも関わらず、ヘアカットの練習を4ヶ月行い、割と自然な演技でありながらチャーミングさも垣間見えた役の徹底ぶりがとてもすごかった。
それに、"フー・モンボー"や特別出演の"チェン・ボーリン"や"リン・ボーホン"と言った、今をかける台湾スター達の演技も、ベテランに劣らず存在感があって良かった。特にチェン・ボーリン演じる道中で出会う"農家の若者"が、主人公のアールイとどこか境遇が似ていてどこか寂しさも漂う青年の姿を演じていて良かった。特別出演でさえも重要な本作は、本当に素晴らしいと思う。

私には幼い頃から通っているまたは通っていた理髪店が2つある。どちらもそれほど客がいるわけでなく、近隣の客がほとんどの店だったが、利益重視ではなく、地域密着型でとても温かくて通いやすかった。時代が変わってもそんな店の存在を大事にしたいなとは思うし、これからも通いたいなと思った。
そして本作は、主人公のアールイと常連の歯医者の"親としての姿"を描いた作品でもある。どちらも愛の伝え方に関しては不器用ながらも、間違いなく子供のことをいつも想っている…そんな親への感謝の贈り物のような側面も本作は持っていたのではないかなと、私は感じた。
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