このレビューはネタバレを含みます
20241006 自分用忘備録
期待のポイントとしては、落語が元ネタであること、白石監督、國村隼さん清原果耶さんの出演。
不安のポイントとしては、草彅さんが主演であること、斎藤工さんの出演。
いざどうなるかな、と思ってみたら期待は満たされ不安は空振りに終わった。いやめでたいめでたい。
落語としては『柳田格之進(の堪忍袋)』を基本に、『文七元結』の要素が加えられていた。『柳田』はバリエーションの多い噺だが、娘は結局見世には出ずに済み、二番番頭と結ばれるというパターンの噺に近かった。娘に関しては一番ハッピーエンド寄りの結末だ。
他方、単なる商家と浪人の諍いではなく、旧主家との因縁がストーリーラインに加えられたことで、柳田本人に関する結末は単純な幸福物ではなくなって、物語の厚みが増して満足感を高めてくれていた。父として娘の片付き先こそ見届け得たものの、噺のように江戸留守居役で帰参などということはなく、己の武士道を清算するべく独り浪々の旅に出る他なかった柳田。
いいなあ。この噺の甘いところ、おかしなところをちゃんと分かっていて、それを映画的に落とし込んである。サゲで終わる噺とは違う落とし前をきちんと柳田につけさせている。落語が好きで、映画も好きなんだな、嬉しいなと思った。
不安だった草彅さんだが、抑制的な演出をつけられていたのか、あまり草彅さん臭くなくて最後まできちんと鑑賞できた。上手ではないし、若く見えたり年を食ったり不安定だったが、これくらいなら耐えられた。髭を蓄えてからの姿には(年相応には全く見えなかったが)見ごたえすらあった。
斎藤工さん。ああ良かった。このまま主役の芝居しかできないおじさんになってしまうのかと心配していたし一時は敬遠すらしていたが、引き算の演技でがっちりと脇を固めていた。年齢不安定な草彅さんに配したことで一種のアンカーにもなっていて貢献度が高かった。國村さんなみに魅せていた。
國村さんの出来はいわずもがな。清原さんは時代劇のお仕事だけでも生涯食べていける。