マインド亀

ヴァチカンのエクソシストのマインド亀のレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
4.0
エクソシズムの基本を抑えながらアクションに振り切った、全然実話なわけないホラーエンタメ

●ヴァチクソ面白かったです。『エクソシスト〜信じる者〜』を見たあとだったから、余計におもしろく感じたのかもしれません。
前評判ではアクション過多な悪魔祓いとか、悪魔の横っ面を殴る神父とか、ヒーロー映画とか言われていたので、そこまで肉体派ではなかったにせよ、『エクソシスト』の呪縛から解き放たれて、しっかりと緩急豊かなエンターテインメントに仕上がっていたので興奮しました。
アクション系悪魔祓いで比較するなら、ゴールデンラズベリー賞ノミネートの本家エクソシストの前日譚でレニー・ハーリン監督の『エクソシスト・ビギニング』(こちらの制作のドタバタは、『エクソシスト・ビギニング』と『ドミニオン』で調べていただくと良いです)のほうが悪魔祓い版『ダイ・ハード』と言っても良いくらいの仕上がりだったことを考えると、こちらのヴァチクソのほうがきっちりと基本が抑えられていて、真面目にホラーの作りをしているように感じましたね。また、悪魔と対峙した時の悪魔祓いの真面目さは『信じる者』になかった部分でした。ちゃんと『エクソシスト』の定石を踏襲しながら新しいエンタメ作りに成功したと思います。

●さらに本作の良さの一つに教会の下に何があるかを探求するインディ・ジョーンズ的エンタメ要素もあるのですが、そういや同じ要素は『エクソシスト・ビギニング』にも『ドミニオン』にもありました。どっちかと言うと『ドミニオン』寄りの考古学的な感じかな。『エクソシスト・ビギニング』はそのまんまインディ・ジョーンズとかダイ・ハードに近いアクションの舞台としての地下建造物だったのでちょっと違うかな。
同じ要素なのにこちらのほうが面白いのは、やっぱりテンポ感ですかね。発見から探求までダラダラしないし、その目的がシンプルでわかりやすい。正直『ドミニオン』は色々と起こり過ぎで訳分からなくなってましたしね。『エクソシスト・ビギニング』『ドミニオン』との共通点は、神父の戦争におけるトラウマが描かれているところにもありますね。

●この作品の魅力は完全に、体格がパンパンに膨らんだラッセル・クロウ演じるアモルト神父のキャラクーの良さ。
壁や扉を蹴破るそのフィジカルの強さ、懐に忍ばせた酒を飲むヤンキー感、フェラーリステッカーを貼ったベスパで法事に向かう坊さんのようなキュートな移動、そして何よりヴァチカンへの反抗。
不良神父なのに腕が良く、そして自己犠牲精神もあるという魅力ある要素に溢れてましたよね。是非是非あと199作に出演してほしいものです。ひょっとするとやってくれそうかも!?
また、バディものとしての楽しさもありますね。ダニエル・ゾヴァットの、なんだか坊っちゃんぽさもラッセル・クロウとの凸凹感にハマってていい感じ。このバディでもう一度お願いしたいところであります。
一方で、被害家族の薄味具合も、さらりとして良いとは思いますが、ジェームズ・ワンならもうちょい上手くできたのかな、とも思ったり。もうちょい悪魔祓いが終わったあとの家族を見せてほしい気もしました。

●まあこの作品の内容だと、そりゃヴァチカンがカンカンになるのは当然ですよね。生きてたら実際のアモルト神父も怒ってたんじゃないか(笑)
だからこそ面白いんですよね。まあ、スペイン異端審問の内容をさらっと触れる程度で悪魔のせいにしたのはちょい良くなかったかな、とも思います。むしろ教会内部の人間の残業性をもっと浮き彫りにして、さらにヴァチカンを怒らせて欲しいくらいですね。
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