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レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【脳天にテレビ直撃、迷い込むはB級映画の世界】
以前から、異様なポスターヴィジュアルが気になっていたフィリピン映画"Leonor Will Never Die"。大阪アジアン映画祭で上映されるも逃しており、悶々としていたのだが2024/1/13(土)よりシアター・イメージフォーラムにて上映が決定した。試写で一足早く鑑賞したので感想を書いていく。

実に不思議な作品であった。映画業界から引退したおばちゃんが、家族と揉めている日常が描かれているのだが、そこに幽霊のような存在が忍び込む。扇風機の電源を入れ、新聞を撒き散らす。そこに脚本コンクールのことが書かれており、おばちゃんは箱にしまっていた企画をリライトする。そんなある日、彼女が外で脚本を練っているとテレビが落ちてきて、脳天に直撃。彼女は昏睡状態となる。そのまま、映画の脚本の世界に迷い込むおばちゃん。狼狽する息子はなんとか彼女を救助しようとする。

脚本の世界はB級映画の世界となっており、激しい銃撃戦が繰り広げられるのだが、創造主であるおばちゃんは堂々と工場のような場所を徘徊しながら参戦しようとする。これが滑稽で面白い。かと思うと映画的な洗練されたショットが突如迷い込む。例えば、違法DVDショップの前で遊んでいる少年がいる。死角からおばちゃんが登場し、傘を銃に見立ててバン!と撃つ場面は妙にカッコよく感じるのである。

そして本作はある種『8 1/2』系統の作品であるので、脚本いじりをメタ的に表現する場面があり、これがまたユニークだったりする。フィリピン映画といえば、ブリランテ・メンドーサやラヴ・ディアスのような社会派作品のイメージが強い。しかし、『Death of Nintendo』に引き続きユニーク映画とエンカウントしやすい土壌ができているように思えたのであった。
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