Kachi

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのKachiのレビュー・感想・評価

3.8
オンライン試写会にて

ホラー映画は敢えて避けてきたものの、A24作品ということで鑑賞。しっかり怖い(割とグロい)し、さまざまに読み取る余白を持った作品だった。

怖さを感じるのは、おそらく描かれている世界が身近だからだ。ハイスクールから大学生たちのちょっとした悪ふざけが、究極的には一連の悲劇を生む展開は、降霊術を他のものに置き換えれば(例えば、軽度のイジメがエスカレートしていく過程とその結末)、何ら突飛なものではなく、それゆえにリアルさが伝わってきた。日本に限らず、人間は集団になると愚かになり、同調圧力によって度を超えてしまうことがある。本作を観ながらそんなことを感じていた。

多かれ少なかれ、誰しも似た経験を持っているのではないだろうか…?それが、本作の怖さの源泉になっていると思う。画としての怖さは、他のホラー映画でも同様だと思う。私たちは「これはフィクションである」と思った瞬間に映像作品から一歩引いてしまう感覚に襲われるが、「これは私も思う節がある」と思ってしまったら最後、作品世界に一歩入り込んでしまう。この効果が、作中の霊を受け入れ、憑依させて精神異常をきたす人物たちとダブる…。

また、本作には奥行きも感じられた。最大の謎は、母の死因であろう。明示的にその死因が示されてさえいればよいものの、ミア自身も降霊術によって精神異常に陥っているため、何が嘘で何が本当か。幻聴なのか本当の声なのか。ますます分からなくなっていく…その不気味さが、怖さの増幅とともに、人間は何に対して恐怖を抱くのかを再考させるキッカケを与えているように思った。

劇場の大スクリーンで観たら、だいぶ鑑賞体験は変わるはず。機会があれば、ぜひ劇場でも。
Kachi

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