耶馬英彦

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

4.0
 不気味で面白かった。幽霊が存在するかどうかの議論はさておき、ある種のサイコ現象は、精神を不安定にすることで何かしらの刺激をもたらすのは想像できる。日本でも昭和の頃に、こっくりさんという遊びをやりすぎて、精神に異常をきたしたという話を聞いたことがある。現在でも、こっくりさんに類するゲームをする子どもたちはいる。日常に倦んだ若者たちの、怖いもの見たさの遊びのひとつだろう。心霊スポット訪問などもその一例だ。

 ジェイドの家で降霊ゲームをするときが、前半のピークのシーンだが、何故かエディット・ピアフが歌った「群衆」のピアノ曲が流れる。どうしてここでシャンソン?と思っていると、フレンチブルドッグが登場して、フレンチキスのシーンになる。フレンチで集めた訳だ。洒落が過ぎる面もあるが、気づく人だけ気づけばいいという制作者の遊びが感じられて、悪くない。

 オーストラリアでもレイシズムは根強く存在するだろうから、主人公にアフリカ系の女性を起用したのは、意図的だと思う。こういう作品を見ると、福祉の先進国家オーストラリアと言えども、不健全な精神性の問題は解決できないでいることが分かる。
 人は千差万別。他人とは相容れない。究極のところ、他人とは分かりあえないものだと悟れば楽になる。諦めが肝心という諺は真実のひとつだ。しかしその心境に至るには、年月がかかる。若者たちの悩みは尽きない。
耶馬英彦

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