Monsieurおむすび

12日の殺人のMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.8
#12日の殺人
フランス版「殺人の追憶」
未解決事件と私生活の泥沼の並走が、男たちのザラついた心を侵蝕する異色犯罪スリラー。
刑事モノではあるが銃撃戦もカーチェイスも犯人との心理戦もなく、作劇ではカットされそうな地味な捜査が丁寧に積み重ねられ、否が応でも次々と浮かび上がる容疑者や妄執の刑事たちが作り上げた生きたまま焼き殺された女性を表象を脳内に固定化させる。
所謂「男社会」の暴力性を纏った深層を反映した手堅い構成。

気づきと核心を突く女性たちの反撃のような言葉の鋭さと、法を犯す者も取り締まる者もほとんどが男性で、また同じようにその被害者がほとんど女性である事実に、徐々にブラックアウトするが如く心が閉じていく感覚を覚えた。
完全無欠と呼ばれた主人公ヨアンが自問を繰り返したように、全ての男性がこの構造の一端を担っていることへの自覚を促しているようにも思えた。
冒頭でのテロップ
フランス警察が捜査する殺人事件は年間800件、そのうち20%が未解決。
その解決への一助となる軌跡を残した佳作。
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