消々

12日の殺人の消々のレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.0
凄惨な未解決事件。容疑者は次々に現れるものの、証拠がない。捜査員は事件にのめりこんでいくものの、打つ手も予算(!)も無くなるし、物語が進むにつれ、もはや精神と根気の消耗戦の様相を呈してくる。
事件は深夜、21歳の女性が生きたまま火をつけられるという殺人。観客には凶行の場が提示され、犯人はなんとなく男性らしいことはわかる。だからか、刑事たちが痴情のもつれを中心に捜査をするのもすんなり受け入れられる。しかも出てくる男はゲンナリするほど最悪なのばっかり。絶対誰かが殺っただろと思わずにはいられない。
が、本当にそれでいいのか。
刑事たちは「嫉妬心」をキーワードに被害者の周りの男性を探るけれど、それこそ先入観ではないのか。被害者は惚れっぽいから殺されたとでも言いたげで、それ以外の可能性を考えていないように見える。しかも捜査員たちは、自身のプライベートや性格や劣等感に引っ張られ、思い込みを強めていくように見える。淡白で冷静そうな班長ですら、焦りに摩耗していく。
でも、これが現実な気がする。
観客は未解決だと知っているから、事件が紐解かれるスリルより、事件を支配してる雰囲気(痴情のも連れによる犯行?)への疑問や、刑事たちの葛藤を一緒に体験するように仕向けられる。頭の片隅で、犯人が女の可能性をなぜ考えないのとか、唯一の物証らしいものを本当に調べた?とか浮かんでは消え、でも、捜査員や親友の様子を見ると断罪もできない。
さっぱりすっきりでは終わらせてくれない物語だった。
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