月下香

片思い世界の月下香のネタバレレビュー・内容・結末

片思い世界(2025年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

🌙2025.04.09_133

片思い世界ってそういう...こんなにも美しくて悲しいタイトル他にないでしょってぐらい良いタイトル。
舞台挨拶で杉咲花ちゃんが、「命の有限さを考え怖くなる。そんな時にこの作品を思い出すとお守りになる」と言っていた。まさにそんなお守りのような映画。

合唱のシーンが本当に良くて、このためだけ映画館に行く価値ある。映画館の音響で聴くからこそより感動したし、この作品の良さを充分に享受できた。そして涙が止まらなかった。
事前情報なしの方が良いと見て、キャストだけしか知らない状態で見たけど大正解。なのでこれから見に行く人は何も知らずに見て欲しい。

まず主演3人の演技にずっと心掴まれっぱなし。
最初は少し周りと馴染めない3人が一緒に暮らしているのかなと。周りと馴染めない理由、人にぶつかられても気に掛けられない理由、バスの扉を閉められる理由...やっぱり坂元裕二が作る世界が大好きだ。
車に取り残された赤ちゃんに気づき必死に助けを求める優花、オーブンに手を伸ばす妹を見る優花。台詞はなくても彼女の気持ちが全て分かるようで目線だけでここまで感情を出せるの凄いなと。

それにしても増崎が怖すぎて。一見黒髪メガネの真面目そうな人だけど、どこか狂っている雰囲気であの話しの通じなさ...あ、スイッチ入ったと思わせる瞬間も上手くて初見の俳優さんだったけど凄いなあと。
刑期を終えていると何度も言っていたけど、だから何なんだと思う。優花の母に「お互い第二の人生を...」と言い始めた時には心底腹が立った。こんな人でも結婚できるなんて。しかも相手の親族から連絡が来るということは相手も承知の上...彼も彼の結婚相手の気持ちも一生理解したくないし出来なくていいなどと考えた。

美咲は帰りたかったのかな。3人はどこに行くのだろう、どうなるのだろう。
こんな世界があるかは分からないけど、レイヤーはあるかもしれないと考えるだけで少し救われる人がいる。そんな映画。
月下香

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