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ドミノのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ドミノ(2023年製作の映画)
3.6
 刑事ダニー・ローク(ベン・アフレック)は、作業療法士がカチカチとリズミカルに叩く音に静かに正気を取り戻す。今作の冒頭5秒、あなたは既に騙されているの台詞通り、なんだか霧に包まれたような物語のスタートだ。最愛の娘の行方不明に、ロークは心身のバランスを著しく崩しているが、正気を保つために仕事に復帰。そんな彼のもとに、銀行強盗の予告のタレコミが入る。現場で不可解な動きをする容疑者(ウィリアム・フィクナー)が、娘の行方に関与している手がかりを見つけたロークは、ふたりの警官を伴って屋上まで男を追い詰めるも、警官は突然暗示をかけられたようになってお互いを撃ち殺し、男は屋上から飛び降り姿を消す。ここまでは正に仰々しい予告編通りで、どうやら催眠暗示のような犯人の仕草に周囲の人間たちが簡単に動かされているらしい。相棒ニックスの協力で、チャペル通りに店を構えるダイアナ・クルーズ(アリシア・ブラガ)を紹介されたロークは、最愛の娘ミニーの写真の下に書かれた「レブ・デルレーン」と言う人物だった。

 洗脳する側と逆洗脳する側の心理的な葛藤かと思えばそうではない。レブ・デルレーンとダイアナという超能力者の他にもう1人の驚くべき超能力者がいると明らかになるのが、94分という時間のちょうど3割の30分過ぎで、その後は謎解きの謎解きのそのまた謎解きを見せながら、事件の驚くべき深淵に迫るのだが、レブ・デルレーンがクリストファー・ノーランのような仮想現実を見せつける時点である程度の展開は読めてしまった。風景も人物すらも何もかもが置き換わっていく空間で主人公が見つけるべきは人為的なヒューマン・エラーで、それがいわば12回目のシナリオで明らかになるのだが、それが大体94分の3分の2の60分という非常に効率の良い作劇は見事なのだが、完成形をプリプロ・レベルまでにグレード・ダウンさせ、主人公にもう一度同じアクションを再現させるというのは流石に悪手という他ない。ドミニクの名前とドミノが「ドミノ計画」に掛かっているというのも苦し紛れで、クリストファー・ノーランの世界観を正にブライアン・デ・パルマの『フュリー』やウォシャウスキー姉妹『マトリックス』で再解釈したような作品だった。
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