Jiyong

窓ぎわのトットちゃんのJiyongのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.3
トモエ学園という楽園、小林先生という恩師に出会えていたら僕はうつ病にならずに済んだのだろうかなどと、暗いことを考えたりした。
トットちゃんの行動を納得いくまでやらせる。あえて言葉をかけることはなく見守る。これがどれだけその後の自己愛に繋がることか。

トットちゃんが比較的裕福な家庭である(当時としては富裕層ではないらしい)のは勿論だけど、それでもある種の豊かさがあった時代なのだなと思った。
宮崎駿が言っていた「こどものうちに危ないことをさせ、怪我をして学ばせた方が良い」という言葉の意味がようやく実体として掴めた気持ち。

戦争の落とした影も、裕福なこどもの視点でとことん描く。なぜ駅員さんが女性になったのか、なぜ歌を歌ってはいけないのか、なぜお腹を空かせなくてはいけないのか。その因果を説明することなく、断片的にトットちゃんの暮らしに影を落とす。
それでも負けない人の強さを感じると同時に恐ろしくもなる。
人はどうせ負けないんだから同じことをしても良いのだと思われないだろうかと。
同じ失敗は繰り返さないと慢心させはしないだろうかと。

アニメーターや美術スタッフに個人的に思い入れのある方々が参加していて、なんだか高畑勲の意思を少しずつでも色んな人が継いでいってるのかもしれないと少し嬉しくなった。
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