ゆき

ミッシングのゆきのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.1
光芒

沙織里という女性を中心に、一つの事件に向き合う人たちを見守る119分。
予告の時点で、𠮷田恵輔監督作品の歪みは覚悟してた。想像以上に感情がかき乱された、形容しがたいがそんな余韻。
なんとなく監督の作品イメージと相反していた主演の石原さとみさん、がっつり物語を背負ってました。

穏やかな映像から始まり、すぐに状況を理解する。
夫婦として寄り合うも人間として壊れていく妻と、支えたい夫のジレンマ。「温度」を求める様や何かにすがるという危うさも然り、夫を演じた青木さんの単独シーンがすべて印象的すぎる。

巻き込まれていく弟、善意と職務の狭間にいる報道陣。ねじれていく時間と風化していく記憶。声にしなかった本音が一番脆い。
「お気持ち」に寄り添うなんて他者には難解すぎる。せめてものお言葉が当事者を追い込み壊していく、中傷はもってのほか。これでもかと言わんばかりに希望を奪われる演出にはこちらまで感情を殺されそうだった。

「少しでも誰かが優しくなれたら」そんな展開や、世武さんの音楽に気持ちは緩やかに整えられていく。受け入れ難い自分の姿があっても、大事な存在を思い返すときだけは慈愛に満ちた表情でいたい。

石原さとみさんから監督への直談判でようやく叶ったという今作の出演。いち早く体感できて幸せです。ありがとうございました。
河村光庸さんが遺してくださった名作たちに敬意を。
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幼い娘の失踪から3か月。進展のない状況に焦り苛立つ妻と、真摯に支える夫には温度差が生じ始める。唯一取材を続けてくれる地方局も視聴率欲しさに方針を変え始め、真実は形を歪めていく。
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